痔核について
肛門から2cmくらい奥には、肛門閉鎖に必要な支持組織(anal cushion)があります。この支持組織が、長期間の刺激や圧力がかかることによって、徐々に大きくなってきたものが内痔核です。支持組織は血管に富むため出血しやすく、また肥大化することによって肛門外に脱出することもあります。脱出してきたり出血のコントロールが難しい場合は手術や注射治療を勧めます。不良な排便習慣(便秘、下痢)や食生活(アルコール、刺激物)、妊娠などが危険因子となります。 外痔核は血流が悪くなることによって肛門のふちに近い部分が腫れたものです。腫れだけの場合もありますが、内部に血栓(血マメのようなもの)が生じることもあります。肛門を冷やしたり多量の飲酒の後にできることが多いとされています。 どちらも同じ痔核ですが成因や治療は異なることがあります。肛門外科で専門の診察を受けられる事を勧めます。
内痔核によくある症状
内痔核は、歯状線(肛門管と直腸のつなぎ目)の上部の支持組織がうっ血していぼ状になった腫れのことで、様々な原因で腹圧がかかることにより生じます。 内痔核が生じる直腸下部の粘膜には知覚神経が通っていないため痛みが生じることは少なく、出血や脱肛によって痔の存在を自覚することがほとんどです。 排便すると便器が真っ赤に染まるくらい多量の出血となる場合もあります。症状が進行すると、排便の際に内痔核が肛門の外に飛び出します。また、肛門付近まで腫れが起きると痛みを感じることもあります。
- 排便時に出血する
- 排便時に痔核が脱出する
- 痛みはないことが多い
外痔核によくある症状
外痔核は、歯状線より下側の肛門上皮に負担がかかり、腫れたり血栓が詰まったりしておきます。アルコールの摂取や冷えることにより血流が悪くなりできることが多いです。肛門上皮は知覚神経が分布しているため、腫れると痛みを生じることがほとんどです。通常、内服や外用薬にて改善しますが、痛みが強い場合は、中の血栓を切開して除去することもあります。基本的には内痔核と違って注射治療や手術は必要ありません。
- 腫れて違和感を感じる
- 強い痛みを感じることが多い
痔核(いぼ痔)の治療法
ジオン注射(ALTA療法)
内痔核に対して行う治療法です。内痔核に硬化剤を注射し、炎症を起こし出血や脱出を抑える治療です。出血や痛みの程度も少なく、侵襲の少ない方法ですが、切除する手術に比べ再発率は結紮切除術に比べ高いです。痛みを感じることは少なく翌日には元通りの日常生活を送れますが、違和感が数週間続くことがあります。
結紮切除術
痔核そのものを切除して、原因となる根部の血管を処理します。従来より行っている方法で、安全性が確立されており再発が少なく、根治性の高い方法です。再発は2.5%以下と言われています。また痔瘻や裂肛などの随伴病変がある場合も同時に行うことができ、汎用性が高く最も標準的な治療です。ただ切るので術後の痛みはあります。
ゴム輪結紮療法
専用の器具を使い、痔核そのものを根元から特殊な輪ゴムで結紮し壊死させて取り除く方法です。壊死脱落した粘膜組織は、輪ゴムと一緒に1週間程度で便とともに排出されます。簡便に施行でき痛みもありませんが、根部の血管を処理しないため、数年でほぼ再発します。基礎疾患のある方、高齢者、一時的な治療が必要な方が適応となります。