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食道がん

食道がんについて

食道がんは食道粘膜に生じる悪性腫瘍のことで、大きく分けて2種類あります。1つは扁平上皮という食道そのものの粘膜からできるもので、日本人の食道がんの90%が該当します。もう1つは腺がんという円柱上皮からできるものです。腺がんはバレット食道の関連が示唆されており、食道と胃のつなぎ目にできますが日本人では約4%程度で少数です。食道がんが進行すると、食道壁の深部に至ります。粘膜から広がっていないがんは「早期食道がん」と言い、粘膜下層に広がったものを「表在食道がん」、さらに奥深くまで浸潤したものを「進行食道がん」と言います。食道がんは進行すると転移しやすくなります。がん細胞がリンパ管や血管に入り込むと、肝臓や肺、リンパ節、骨などに転移する恐れがあります。また、食道に接した大動脈や気管・気管支に浸潤する恐れもあります。食道がんの代表的な発症原因は、飲酒・喫煙です。特に日本人が発症しやすい扁平上皮がんは、飲酒・喫煙の影響を受けやすいとされています。飲酒によって体内にできるアセトアルデヒドは発がん性物質であり、アルコールを分解する酵素の働きが弱い方は、食道がんの発症リスクになると考えられています。また、飲酒・喫煙どちらの習慣もある方は、さらに食道がんを発症しやすいと言われています。腺がんは胃食道逆流症に起因するバレット食道が発生母地となることが欧米では示唆されています。

食道がんを発症しやすい方

  • 60歳以上の男性
  • 飲酒の習慣がある方・少量の飲酒で顔が赤くなる方
  • 喫煙される方
  • バレット食道
  • 食道アカラシア

上記に当てはまる方は食道がんを発症しやすいとされていますので、明確な症状が無くても胃カメラ検査を受けましょう。

食道がんの自覚症状・セルフチェック

  • 嚥下時にわずかにしみる感じ
  • 嚥下障害(とくに固形物)
  • 体重減少
  •  嗄声(声がかすれる)
  • 咳嗽(せき)
  • 胸部痛

進行するにつれて症状が起こりますが、こうした症状が現れるのは食道がんだけではありません。そのため、ご自身で判断せずに、一度専門医へご相談ください。

食道がんの検査

消化器内科について食道がんの検査としては、バリウム検査と胃カメラ検査を行います。バリウム検査では、バリウムを飲んでからレントゲンで胃や食道の状態を確認します。食道の粘膜に変形をきたすような食道がんの状態を削除確認することが可能ですが、発症間もないがんの場合は確認が難しいとされています。食道がんが大きくなると、食道に隆起や潰瘍、狭窄が確認できます。一方、胃カメラ検査では、鼻や口から内視鏡スコープを入れ、食道・胃・十二指腸の状態をリアルタイムで確認します。胃の他に、食道の疾患を見つけるうえで有効で、変形のない表面の色調変化だけのような早期のがんでも発見することが可能です。検査で疑わしい病変が確認されたら、組織を採取して病理検査を行います。当院では鼻からスコープを挿入する経鼻内視鏡検査を実施しています。

胃カメラ検査

食道がんの治療

内視鏡治療・化学放射線療法・外科手術

食道がんは、解剖学的位置、組織学的構造から比較的早期の段階からリンパ節転移をきたしやすいと言われています。食道がんの治療では、食道の周りのリンパ節を取り除く重要度(リンパ節転移の危険性)を考慮し、内視鏡治療・化学放射線療法(放射線治療と化学療法の併用)・外科手術の3つから適切なものを選びます。リンパ節転移の危険性は、がんの深さや広がり、組織の種類などに基づき慎重に検討します。早期食道がんではリンパ節転移の可能性が極めて低いため、内視鏡的切除が推奨されています。内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下剥離術(ESD)というという方法で、内視鏡を用いて病変を切除します。内視鏡切除は身体にかかる侵襲も少なく、治療後のQOLも手術と比べて非常に良好です。切除した病変は病理検査を行い、断端にがん細胞が遺残していないか、深達度(がんの深さ)を確認します。がんの深達度が術前の診断より深く浸潤していた場合は追加治療が必要となります。がんが深くまで浸潤していたり追加治療が必要な場合は、化学放射線療法や外科手術を選択します。早期の食道がんであれば、低侵襲の内視鏡切除で完治を目指せる疾患です。発がんリスクの高い方は定期的な胃カメラ検査を勧めます。