お腹の張り・膨満感について
お腹が張る原因としてよくあるのが便秘です。腸の動きが悪くなると便やガスが体外に排出されず症状が出ます。他には呑気症と言ってストレスや早食いなどにより空気を多く飲んでしまうためにおこることもあります。 腸閉塞などの疾患の症状として生じる場合もあります。腸閉塞は深刻な疾患であり、突如として激しい膨満感が生じます。強烈な腹痛や嘔吐も起こっている場合は速やかに当院までご相談ください。また、食欲低下、息苦しさ、発熱、腹痛、むくみなど、膨満感以外の症状も起こっている場合も、可能な限り早めに当院までご相談ください。
膨満感が生じる疾患
疾患の症状として膨満感が生じる場合もあります。
便秘
便秘によってお腹に便が滞留し、腹部膨満感が起こることは少なくありません。便秘は①食事摂取量の低下②胃腸の動きの低下③排便の我慢や便意の低下④肛門の機能の低下などにより起こると言われています。また消化器の疾患やお薬の副作用として起きることもあります。とくに発熱や血便・体重減少を伴う場合は、重篤な疾患が引き起こしている可能性もありますのでお早めにご相談ください。便秘が長引いている場合は、消化器内科に相談して原因を特定し、便秘の種類に応じた治療を受けることが必要です。便秘は生活の質を下げるだけではなく、生命予後にも影響すると言われております。当院は、患者様の症状に合った治療を提供することを心がけていますのでお気軽にご相談ください。
過敏性腸症候群
便秘や下痢、腹痛、膨満感などの慢性的な症状が現れる疾患です。消化管の知覚過敏や機能低下が原因で症状が現れると考えられています。ストレスが原因で発症する場合もあり、日常生活にも悪影響を及ぼす傾向にあるため、早めに消化器内科に相談して専門的な治療を受けましょう。
逆流性食道炎
胃の内容物が食道に逆流して炎症が生じる疾患で、のどのつかえ感・違和感、呑酸(苦いものや酸っぱいものが込み上げてくる)、咳、胸やけなどの症状が代表的ですが、膨満感が起こる場合もあります。食事などの生活習慣や加齢が原因で発症することが多く、原因を改善しないと繰り返します。何度も繰り返して食道粘膜の炎症が慢性化すると、食道がんを発症しやすくなると考えられており、上記のような症状が頻発する場合は消化器内科に相談して専門的な治療を受け、再発を防ぐことが大切です。
腹部の腫瘍
消化器のがんが原因で膨満感の症状が生じる場合があります。また、女性では子宮や卵巣に起こる婦人科疾患によって膨満感が起こる場合もあります。
上腸間膜動脈症候群
十二指腸と小腸の接合部は、上腸間膜動脈と大動脈の間にあり、血管と消化管の間にクッションの働きをする脂肪が存在します。この脂肪は短期間で著しく体重が減ると失われる場合があり、十二指腸が血管から圧迫されて膨満感などの症状が現れる場合があります。食後に仰向けの姿勢になると症状が強くなり、うつぶせの姿勢になると症状が軽くなる特徴があります。過度なダイエットや成長期に症状が起こる場合がありますが、高齢者が発症する可能性もあります。
便秘について
通常の便秘は、加齢や体質・生活習慣による腸管の蠕動運動の低下や排便に関係する筋力の低下などで起こります。頑固な便秘は不快感を生じ、生活の支障になることもありますので適切な排便は重要です。浣腸や刺激性の下剤の長期使用は、習慣性の便秘を進行させてしまう事もあるので、適切な下剤の使用を勧めます。便秘は原因により薬剤も変わってくるので、お困りの方は一度ご相談ください。 また大腸がんや神経性疾患、肛門自体の異常などでも起こってくることがあります。便秘が長引いている、下痢と便秘が頻発する、腹痛などの別の症状もある、残便感や膨満感などが起きているという方は、消化器内科に相談して原因を診断し、適切な治療を受けることをお勧めします。
便秘の種類
便秘は、体外に出さなければならない糞便を満足に排便することが難しくなった状態で、数日間排便できていない状態の他、長時間強くいきまないと排便できない、少ししか排便できず残便感を感じる、浣腸や内服なしで排便が難しいなどの状態も便秘に該当します。便秘は女性が発症しやすいものと思われがちですが、男性が発症することもよくあります。高齢者は消化管の機能が落ちることで、便秘をきたしやすくなります。また、便秘は加齢だけでなく様々な発症原因が考えられます。原因に応じて以下の4つに分類され、種類に応じて適切な治療法は異なります。
機能性便秘
最も多いタイプの便秘です。生活習慣やストレス、加齢などの影響を受けて、大腸や直腸・肛門の働きが乱れる結果、起こります。よりわかりやすいように、さらに三つに分けて説明します。
弛緩性便秘
大腸は、その内容物(食べ物の残りかす=便)をぜん動運動によってコロコロ転がし、少しずつ水分を吸収しながら直腸へと運びます。大腸を動かす筋肉が緩んで、ぜん動運動が弱まると、なかなか便が運ばれないために便秘になります。高齢者が便秘しやすい原因の一つです。また、朝食をとらなかったり、運動不足などの乱れた生活習慣による便秘も、これに該当します。
痙攣性便秘
大腸のぜん動運動に連続性がなくなり、便の通過に時間がかかり過ぎて起こる便秘です。ストレスの影響が強いと考えられています。
直腸性便秘
運ばれてきた便が大腸から直腸に入ると、直腸のセンサーが働き便意を催します。そこでトイレに行くと、ふだんは肛門を閉めている肛門括約筋が緩み、排便に至ります。ところが、便意を習慣的にがまんしていると神経の感度が鈍って、直腸に便が入っても便意を催さなくなります。女性が便秘しがちな理由の一つです。また最近、温水洗浄便座の水を肛門の奥まで入れるために神経の感度が鈍り、便秘になる人が増えています。
器質性便秘
大腸がんや手術後の癒着、炎症性腸疾患などのために大腸の中を便がスムーズに通過できずに起こる便秘です。女性で、直腸の一部が膣に入り込んでしまう直腸瘤もよくある原因です。このタイプの便秘では、元の疾患を治すことが大事です。
症候性便秘
甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢進症では大腸のぜん動運動が弱くなり、便秘がちになります。いずれも女性に多い病気です。女性の場合、病気とは別ですが、生理や妊娠中にホルモンの影響で便秘になりやすくなります。このほか、神経損傷や糖尿病の合併症などで、神経の働きが不調になった場合も、このタイプの便秘が起こります。
薬剤性便秘
処方頻度が高いお薬や市販薬の中には、腸の機能が落ちる副作用をもたらすものも存在します。特に、咳止め、抗うつ薬、抗コリン薬によって便秘が生じやすくなるため、お気を付けください。お薬の内服を始めてから便秘になったという場合は、なるべく早めに専門医に相談し、処方内容を見直すことが重要です。
便秘の原因となる消化器の病気
まず気を付けなければならない病気は大腸がんです。肛門に近い大腸にがんができて大きくなってきた場合は通過障害が起こるため、便秘になる・便が細くなるといった症状が現れることがあります。急に便秘になってきた場合は早めに専門医に相談することをお勧めします。一般的ではありませんが腸閉塞などでも起こることはあります。排ガスもなく腹部が腫れてくるような場合は緊急を要することもあります。そのような場合は直ちに医療機関にご相談ください。また二次的に痔核や裂肛、大腸憩室なども起きることがあります。
便秘の検査
問診にて、排便回数や便の状態、便秘症状が起こった時期や経過、内服中のお薬、生活習慣、既往歴、別に症状が起きていないかなどを確認します。必要があれば大腸カメラ検査、血液検査、腹部レントゲン検査などを実施して、便秘の原因や種類を確認します。大腸疾患によって起こっている場合は、大腸カメラ検査が有用です。もし検査で異常を認めなくても、異常がないと確認することは重要です。通過障害をきたす疾患があった場合、逆に下剤により症状を悪化させてしまう事があるので注意が必要です。
便秘の治療
原因疾患が分かっている場合は、その治療を優先させます。便秘の治療では、生活習慣の見直しや薬物療法が基本となります。生活習慣の見直しでは、運動、食事、水分補給の他に、排便習慣を見直すことも大切です。特に、便意を催すことが少なくなっている場合は、排便習慣をしっかりと見直す必要があります。また、薬物療法では、患者様に合わせた適切な処方を行います。下剤の種類は多くありますが、一般的には非刺激性の下剤から使用していきます。頑固な便秘には刺激性の下剤も使用していきますが、長期使用により腸の蠕動運動の減弱を起こし薬量が増えてしまう事もあるため、注意が必要です。
便秘が慢性化している場合は当院までご相談ください
強くいきんでも少ししか排便できない、数日間排便できていない、下痢と便秘が頻発する、残便感を感じる、浣腸や内服なしで排便が難しいといった状態であれば、なるべく早めに専門医にご相談ください。場合によっては、重大な疾患が原因となっている恐れもあります。また、生活習慣が原因で便秘が長引いている場合は、多様な病気を発症しやすくなるため、なるべく早めに相談することをお勧めします。健やかな日常生活を送れるようにするために、便秘が長引いている方は遠慮なく当院を受診してください。