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裂肛(切れ痔)

裂肛(切れ痔)について

肛門の出口周辺の肛門上皮が切れた状態を裂肛(切れ痔)と言います。女性に多く、肛門の前側と後側が切れやすい部位です。便秘で固い便や、頻回な下痢をすると肛門に負荷がかかり切れやすくなります。初めのうちは切れても上皮が再生しすぐ治りますが、繰り返すうちに上皮が修復される前に切れるようになり、慢性化していきます。慢性化すると創は固く伸縮性が悪くなり、進行すると肛門が狭くなることにより排便が困難になったり、排便後しばらく痛みが続くようになります。また裂肛に付随して肛門ポリープというイボができてきたり、皮垂という皮膚のたるみができたりすることもあります。慢性化すると投薬治療ではなかなか改善せず手術が必要になってくることも少なくありません。慢性化する前に適切な治療を行うことが肝要です。

裂肛(切れ痔)のよくある症状

排便時の出血と痛みがよくある症状です。切れる場所によりあまり痛みが起こらないこともあれば、激しい痛みが生じることもあります。出血についても、ペーパーに血が付着する程度のこともあれば、便器が真っ赤になることもあります。進行して慢性化していくと肛門が狭くなり排便しづらかったり、排便後に長時間の痛みを生じたりすることもあります。また随伴的に肛門ポリープができ排便の時に飛び出してきたり、皮膚のたるみができ便が拭きずらかったり痒くなりやすくなることもあります。慢性化すると不可逆性に症状が進行していくことも少なくありません。

急性裂肛

  • 排便時に痛みを伴う。
  • 排便時に出血する。
  • 症状は数日で治ることが多い。

慢性裂肛

  • 排便時に痛みを伴う(2,3時間続くこともある)。
  • 排便時に出血する(急性期に比べ多くはない)。
  • 随伴性に肛門ポリープ・皮垂ができる。
  • 進行すると肛門が狭くなり、強く気張らないと便が出なかったり、細い便しか出なくなることもある。

裂肛(切れ痔)の手術

急性期は投薬で様子を見ることがほとんどです。肛門に負担がかかり起こるので便通のコントロールは重要です。慢性化すると創が硬くなり不可逆性に症状が進行するので、手術が必要になることも少なくありません。悪性の疾患ではないので手術は必ずしも行うわけではありませんが、患者様の状態と病悩を考慮の上、適切な場合にかぎり勧めます。

用指肛門拡張術

肛門括約筋が過剰に緊張し、強い痛みが生じている場合に実施する処置です。状況に応じ麻酔をして、肛門括約筋の緊張を取り除くために、指や器具で肛門を広げて症状の緩和を図ります。

側方皮下内括約筋切開術(LSIS)

肛門括約筋が硬くなり伸縮性が悪くなっている場合に実施します。局所麻酔をして歯状線より下方の肛門括約筋を切開し、肛門の緊張を低下させます。肛門括約筋は切りすぎると便漏れや排便の我慢が困難になることもあるので、深く切りすぎないように慎重に行う必要があります。

裂肛切除術、肛門ポリープ切除

創が瘢痕化し投薬では改善が見込めない場合に行います。もっともスタンダードな方法で固くなった組織をはぎ取るように切除し、治りやすい創を形成します。伸縮性の悪い括約筋があれば切開したり、肛門ポリープや皮垂があれば同時に違う術式を組み合わせて行うこともあります。

皮膚弁移動術(SSG)

括約筋が硬くなり指も入らないような高度な狭窄に対して行います。線維化・瘢痕化した部分を裂肛切除術で取り除き、失われた部分に周辺の皮膚を移植し伸縮性のいい状態にします。日帰りでも可能ですが、狭窄が高度な場合は腰椎麻酔を施行し括約筋を緩めながら行うほうが適切な場合もありますので入院を勧めることもあります。